おだやか診療所です。
本日は、前回の「難病医療費助成制度」に続いて、「自立支援医療制度」について書いてみたいと思います。
なお、この投稿では「精神通院医療」について書きたいと思います。
自立支援医療制度とは?
自立支援医療制度は、心身の障害を除去・軽減するための医療について、医療費の自己負担額を軽減する公費負担医療制度です。所得に応じて、1か月の医療費等の自己負担の上限額が決められます。その上限を超えた部分の自己負担金を助成します。
例えば、1か月の自己負担金の限度額が10000円の人の場合、実際に一月18900円の自己負担が発生したとすると、10000円を超えた部分である8900円が助成されます。
このあたりは、ほぼ難病医療費助成制度と同じ内容です。
対象者は?
対象者は、精神通院医療・更生医療・育成医療を受けている人となります。
更生医療は、身体障害者福祉法により身体障害手帳を交付されている人で、手術などにより改善が期待できる人に適用されます。たとえば、人工関節置換術を受ける人や、白内障で水晶体摘出術を受ける人、ペースメーカ植え込み術を受ける人や、腎移植、人工透析を受ける人が該当します。
育成医療は、身体に障害がある児童が対象となります。更生医療は18歳以上の人が対象ですが、育成医療は18歳未満の人が対象となります。
精神通院医療の対象
精神通院医療は、下記の疾患などに該当する人が対象となります。ただし、外来通院もしくは訪問診療のみが対象であり、入院治療は対象外となります。
- 統合失調症
- うつ病、躁うつ病などの気分障害
- 薬物などの精神作用物質による急性中毒またはその依存症
- PTSDなどのストレス関連障害や、パニック障害などの不安障害
- 知的障害、心理的発達の障害
- アルツハイマー型認知症、血管性認知症などの認知症
- てんかん
重度かつ継続について
「重度かつ継続」に該当する人は、さらに医療費の自己負担額の上限が下がります。該当する疾患は下記の通りです。
①医療保険の「多数回該当」の方。多数回該当とは、直近12か月の間に、高額療養費の支給を3回以上受けた方のことを指します。
②以下の疾患に該当される方。
- 症状性を含む器質性精神障害(高次脳機能障害、認知症など)
- 精神作用物質の使用による精神および行動の障害(アルコール依存症、薬物依存症など)
- 統合失調症、統合失調症型障害及び妄想性障害
- 気分障害(うつ病、躁うつ病など)
- てんかん
③ ②以外の疾患で、3年以上精神医療を経験している医師から、常同および行動の障害または不安及び不穏状態を示すことから、入院によらない計画的かつ集中的な精神医療(状態の維持、悪化の予防のための医療を含む)が続けて必要であると判断された方。
重度かつ継続の申請は、難病医療費助成制度とは異なり、自立支援医療の申請時に同時に申請を行うことができます。
医療費の助成内容は?
3割負担の方は、医療費が1割負担となります。たとえば、3割負担で一月3600円支払っている方の場合、ひと月1200円の支払いとなります。また、所得に応じて1か月の自己負担額の上限が決められます。
厚生労働省のホームページより
助成を受けるには?
自立支援医療費の受給の申請が通ると、医療費の助成を受けることができます。ただし、医療費の助成を受けるためには「指定自立支援医療機関」を受診する必要があります。また、訪問看護の費用や、薬局での薬剤費に対しても費用の助成がありますが、これも指定された訪問看護ステーションや薬局である必要があります。
指定自立支援医療機関については東京都福祉保健局の病院・診療所のページに記載されています。
指定薬局については、薬局に記載されています。
指定訪問看護ステーションについては、訪問看護事業者等に記載されています。
なお、当診療所は、指定自立支援医療機関に指定されています。
東京都の独自の医療費助成制度
東京都では、社会保険加入者・後期高齢者医療制度加入者・国民健康保険組合加入者のうち、区市町村民税(住民税)が非課税の世帯の方に対し自立支援医療(精神通院医療)にかかる自己負担額分を助成する制度を実施しています。ただし、介護保険による訪問看護の自己負担分は除きます。
ただし、区市町村の国民健康保険に加入している方は、それぞれの自治体によって対応が違う可能性があります。
助成内容
以下に示す医療費および介護費用に対して助成を受けることができます。
- 診療費(精神通院医療)
- 薬剤費
- 訪問看護(医療保険)
- デイケア(精神)
医療費の自己負担額の上限が5000円の人の場合、診療費、薬剤費、訪問看護費用などが、すべてまとめて自己負担5000円となります。診療所1か所につき5000円、薬代は別途5000円、というわけではなく、すべてまとめて5000円です。ただし、薬局は原則1か所のみの登録となります。受診する医療機関を変更する場合は、その申請が必要となります。
なお、精神通院医療と関係のない病気での診療費や薬剤費には助成は適用されません。たとえば、認知症の人が風邪をひいた際の、診療費や咳止めや解熱剤などの薬剤費に対する医療費助成はありません。
自立支援医療の申請は?
申請に必要な書類は以下の表の通りです。
厚生労働省のホームページより
自立支援医療支給認定申請書
自立支援医療費支給認定申請書については、区市町村の窓口にあります。平成28年1月より、マイナンバーの記載が必要となりました。
自立支援医療費支給申請書の例として、宇治市の申請書の書式をリンクしておきます。
診断書(臨床調査個人票)
自立支援医療診断書は、区市町村の窓口にあります。また、東京都福祉保健局のホームページからも書式のダウンロードができます。
自立支援医療診断書(精神通院)Word形式ダウンロード (Word:54KB)
自立支援医療診断書(精神通院)Excel形式ダウンロード (Excel:99KB)
重度かつ継続に該当する場合の意見書はこちらにあります。
「重度かつ継続」に関する意見書ダウンロード (Word:40KB)
同じ医療保険の世帯の方の所得状況等が確認できる資料
生活保護の方・・・福祉事務所の証明書、保護決定通知書の写し
区市町村非課税世帯の方・・・非課税証明書、標準負担額減額認定書等
中間所得層、一定所得以上の方・・・区市町村民税の課税証明書
マイナンバー
個人番号カードがない方は、マイナンバー通知カードと顔写真付きのもの(運転免許証、精神障碍者保健福祉手帳、パスポート等)の公的書類を提示する必要があります。また、個人番号が記載された住民票の写しもしくは住民票記載事項証明書を提示することも可能です。
健康保険証の写し
申請者本人と、同じ世帯の方の健康保険証の写しを提出します。
その他
公的年金等の収入等に係る申出書・・・区市町村民税課税(非課税)証明書の提出が必要な人全員が非課税の場合に必要となります。また、個人番号に係る同意書にマイナンバーを記載する場合でも必要となります。用紙は区市町村窓口に用意してあります。
申請者の障害年金、遺族年金等の収入を証明する書類・・・公的年金等の収入等に係る申出書に記載された収入がある場合に提出が必要となります。年金振込通知書や年金支払い通知書などのコピーを準備します。
人工呼吸器等装着者に係る診断書・・・人工呼吸器や体外式補助人工心臓を使用している人が提出します。
提出先(区市町村窓口)
東京都では、パンフレット(1~4ページ)、パンフレット(5~6ページ)に記載された窓口で申請を受け付けています。住所によって申請場所が異なります。
最後に
自立支援医療の申請から受給者証の交付までおよそ三か月かかります。ただし、医療費助成は申請日から受けることができます。なお、難病医療費助成制度と違い、受給者証の交付前に支払った医療費の還付制度はありませんので、注意が必要です。医療機関や薬局、訪問看護ステーションが、申請日以降は受給者証が交付されるものと仮定して医療費を徴収し、もし交付されなかったら追加分を支払うという方法が例示されています。ただし、自己負担額の上限がいくらになるかわからないため、実際には受給者証が交付されるまでは申請前と同じように医療費を支払い、受給者証が交付されたら、医療機関などから支払った医療費のうち上限を超えた分を還付してもらう方が現実的と思います。
参考
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