おだやか日記

プレシジョン・メディシン~新たな抗がん剤治療~

おだやか診療所です。

本日は、がんの化学療法であるPrecision Medicine(プレシジョン・メディシン)について書いてみたいと思います。

プレシジョン・メディシンとは

プレシジョン・メディシンとは、患者個人レベルで最適な治療方法を分析し、それを実施することを言います。

具体的には、がん患者のがん遺伝子レベルで分析し、最も効果のある抗がん剤を特定し、その抗がん剤を使用して治療を行います。

プレシジョン・メディシンの利点

プレシジョン・メディシンを行わない場合、効果がなく副作用ばかり出現する抗がん剤を使用するリスクがあります。特に日本では、各抗がん剤に保険適応病名が決まっているために、肺がんに使用できる抗がん剤、乳がんに使用できる抗がん剤など、どの臓器にがんがあるかによって使用できる抗がん剤が限られています。そのため、選択肢の幅が狭く、その結果効果がある抗がん剤を選ぶことが難しくなっています。

プレシジョン・メディシンをおこなうことにより、あらかじめ効果がない抗がん剤も知ることができます。それにより、副作用ばかりで効果がない抗がん剤の投与を避けることができます。

また、これまで手術や放射線療法、標準的な抗がん剤治療を受けてきたが効果がなくなってきた、という人にもプレシジョン・メディシンが有効な場合があります。がんの遺伝子変異を分析することにより、今まで使用しなかった抗がん剤が効果があるとわかった場合、がん治療に希望の光が見えてきます。

さて、先日本庶先生が免疫チェックポイント阻害薬の基本的な理論を構築したことによりノーベル医学・生理学賞を受賞しました。この研究を基に開発されたのが免疫チェックポイント阻害剤(抗PD-1抗体)であるオプジーボです(ほかにキイトルーダという薬もあります)。これが報道で「免疫療法」と紹介されたため、がん患者さんが免疫療法を行うクリニックに受診することが増えたようです。しかし、これらのほとんどは免疫チェックポイント阻害剤とは違う治療を行っています。そして、そういった免疫療法の効果はほとんどありません。

参考 ノーベル賞受賞で相談殺到 誤解してほしくない免疫療法(Buzz Feed)

一方で、プレシジョン・メディシンはしっかりとした根拠のある治療法です。

プレシジョン・メディシンの課題

もちろん、プレシジョン・メディシンもいいことばかりではありません。常に効果の期待できる抗がん剤が見つかるとは限りません。仮に効果のある抗がん剤が見つかったとしても、100%有効というわけではないようです。SCRUM-Japanという治験では、肺がんに対し約50~70%に効果が認められているようです。ただし、これらの結果は、「手術不能、根治的放射線療法不可能」な方に行っていることに注意が必要です。つまり、標準療法では治療できない方に対し半数以上で効果があったということです。

また、日本独自の問題として「医療保険の適応かどうか」というものがあります。たとえば、肺がんの人の遺伝子変異を分析して、腎臓がんに使用する抗癌薬が効果が期待できそうだったとします。この場合、肺がんの人に腎臓がんの抗がん剤を投与することは医療保険の適応外となってしまい、治療費が全額自費となってしまいます。抗がん剤治療を全額自費で行うと、非常に高額になり、経済力がない人はプレシジョン・メディシンを行うことが難しい状況です。治験に参加できれば費用の問題は回避できるのですが・・・・

SCRUM-Japanのホームページ

PleSSision-Rapidのページ(慶応大学、pdf)

まとめ

新たなアプローチにより癌治療の可能性を広げたプレシジョン・メディシン。日本では医療費などの問題もあり、これは国や自治体などの行政が解決していく問題でもあります。すべての人に平等に医療を提供できる医療保険制度ですが、新しい医療に対応できないという大きな欠点も存在します。

プレシジョン・メディシンはほとんど期待できない免疫療法や民間療法とは違い、効果が期待できる治療法です。同じお金をかけるなら、プレシジョン・メディシンに期待した方が、可能性は圧倒的に高いといえます。

いずれは、プレシジョン・メディシンで効果があるとわかった抗がん剤を、我々在宅医療医が在宅で投与し、並行して緩和ケアを行う時代が来るでしょう。

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