おだやか日記

認知症の診療~実例その12~

おだやか診療所です。

認知症の改善例その12です。

この前、「認知症ってよくなるんですか???」と聞かれました。認知症の中には治せる認知症もありますが、4大認知症と言われるアルツハイマー型認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症、血管性認知症は残念ながら現時点では根治不可能です。しかし、その人らしさを取り戻し、本人も家族も笑顔で暮らしていけるようになったら、それを「認知症の改善」としてもよいのでは、と考えています。

症例

80代前半の男性。レビー小体型認知症の診断がついていた。しばらくは緩やかに進行しつつも落ち着いた生活をおくっていたが、ここ最近急激にADLが落ちてきて、嚥下機能も悪化し、どうも誤嚥性肺炎を起こしたようだとのことで紹介があり、訪問診療開始となった。

アセスメント

通常、アルツハイマー型認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症などは、週単位や日単位での急激な進行はほとんどないと言われている。急激に進行した場合は、何かほかの原因を探る必要があり、最低限血液検査や脳画像撮影が必要となる。

この症例ではまさしく誤嚥性肺炎の真っただ中であり、血液検査はともかく脳画像撮影は不可能であった。まず血液検査を行い、肺炎に対し抗生剤を処方、発熱に対し解熱剤を処方。飲みやすいように細粒にして、シロップなどに混ぜて何とか内服できた。

並行して、もともと処方されていたアリセプト3㎎を中止。アリセプトは半減期が長いため体に残りやすく、そこに誤嚥性肺炎が加わって腎機能も一時的に低下しており、抜けきるには時間がかかると予想したが、何とか内服でき、アイスクリームなどを舌にのせるとゆっくりと溶け、それをしっかり飲め込めていた。

こういった状況から、肺炎さえ治療できれば、経口摂取は十分可能と考えた。また、肺炎の治療中に絶食とするとかえって嚥下機能低下を招くため、少しでもいいから何か食べるように説明した(その一部がアイスクリーム)。

さて、血液検査では甲状腺機能やビタミンなどは正常で、認知症の急激な進行の原因となるような検査所見はなかった。

治療

初診後およそ10日間で肺炎は治癒した。その後、L-DOPA少量処方。覚醒があまり良くないこともあり、リバスタッチパッチ2.25㎎からスタート。この処方で状態は徐々に改善し、食事もしっかりとれるようになってきた。

状態が改善した後に脳画像検査施行。前頭葉の萎縮がみられるもその他に特に問題なく、慢性硬膜下血腫や正常圧水頭症、脳腫瘍などの可能性はかなり低いと考えられた。その結果を見てリバスタッチパッチを4.5㎎に増量。ここでリバスタッチパッチの増量は終了し、4.5㎎で維持とした。

その後さらに改善を見せ、ほぼ寝たきりに近かったADLは、手引き歩行で近所の散歩が可能なレベルまで回復した。

まとめ

認知症が急激に進行したように見えるときは、原因を探ることは鉄則です。血液検査や脳画像検査を行います。また、せん妄や、薬剤の影響なども考慮する必要があります。しかし、この症例のように、急激に進行しても原因が良く分からないことがあります。レビー小体型認知症の一部の方にこういったことが見られます。アルツハイマー型認知症ではほとんど見られません。前頭側頭型認知症でもたまにありますが、意味性認知症の出現により記憶力低下が急に進行したように見える場合もあります。

個人的には、レビー小体型認知症は3つのパターンがあると考えています。

  1. 純粋なレビー小体型認知症
  2. アルツハイマー型認知症に併発したレビー小体型認知症
  3. 進行の早いレビー小体型認知症(悪性レビー小体型認知症)

3のパターンはτ蛋白が関係しているのかもしれません。レビー小体型認知症にしては進行が早く、治療がなかなかうまくいかないことがあります。

1は通常進行はゆっくりで、薬物療法に対する反応も非常によく、時折劇的な改善を見せることがあります。薬剤過敏性に十分注意します。

2は、アルツハイマー型認知症で発症した人がレビー小体型認知症を併発する例で、以外とよくあります。その際、アルツハイマー型認知症の治療を続けると悪化しますので、レビー小体型認知症ととらえて治療方針を変更します。

 

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