おだやか日記

その人らしさ~最期まで自分らしくいきることとは~

おだやか診療所です。

本日は、「その人らしさ」とは何か、「その人らしさ」をなくさないために何をすればよいのか、について考えたいと思います。

その人らしさとは?

訪問診療の現場では、患者さんは高齢者であることがほとんどです。認知症の方でも、心不全などの内臓疾患の方でも、脳梗塞や脳出血などの血管性障害の方も、大腿骨骨折などの整形疾患の方も、高齢者の方がほとんどです。

一方、末期がんのお看取りとなると、高齢者の方もいますが、若い方もいます。

「そのひとらしさ」というものは、年齢で変わるのでしょうか?変わる部分もあるし、変わらない部分もあると考えます。

「そのひとらしさ」「その人らしく生きる」という言葉はあいまいであり、よく使用されますが、その中身は難しく、おそらくしっかりとした定義もないでしょう。

というわけで、「そのひとらしさ」「その人らしく生きる」とは何か、自分なりに定義してみたいと思います。

「そのひとらしさ」の定義

以前ブログにて「Narrative Based Medicine」について書きました。

narrative based medicine~物語に基づく医療とは~

この「Narrative Based Medicine」も、自分なりに考えた内容となっています。

さて、人生には過去~現在と現在~未来の2つがあると考えることができます。このとき、過去~現在については、すでに決まったものがたりが存在します(story)。しかし、現在~未来については、どのようなものがたりになるか、いくつかの可能性があります(Narrative)。

患者さん自身が、「こういうふうに生きていきたい」「こういうことをやってみたい」と思っていることを実現できたとすれば、それは患者さんにとってNarrativeが素晴らしいstoryになったと言えるでしょう。一方で、自分の思っていたのとまったく違うものがたりになったときは、よいstoryだったということはできません。

さて、「そのひとらしさ」「その人らしく生きる」ということは、患者さんが「こういうふうに生きていきたい」「こういことをやってみたい」と考えていることが実現することとほとんど同じではないでしょうか?

自分が思い描く人生に近づくことができたとき、人は嬉しくなります。一方で、思う通りに人生が進まないと、焦りや苛立ちを覚えるでしょう。焦りや苛立ちは、認知症の方で言えばBPSDにあたります。自分の思い描く人生と異なる道を歩むということはとても不安であり、不快でもありますから、それがBPSDの原因となっても当然です。

「その人らしさ」とは、その人の思い描く人生に近づくことである

その人らしさって実現できるの?

例えば、認知症の方が、「認知症が治って昔のように仕事をしたい」と考えていても、現在の医学では認知症を治すことはできません。また、末期がんの方が、「がんが治ってまた旅行に行きたい」と考えていても、末期がんの状態から改善する可能性は残念ながら低いです(ただし、末期がんであっても、抗がん剤が奏功したり、プレシジョンメディシンなど新しい治療法で末期がん状態から脱する人もいます)。この場合、どうすればよいのでしょうか?

すべてを達成することは難しいとしても、一部を達成することはできます。「認知症が治って昔のように仕事がしたい」と考えている方では、認知症の症状を医療や介護の介入でうまくコントロールして、デイサービスなどで役割を持ってもらうことにより、思いの一部をかなえることができます(仕事をしたいという希望は、社会や組織、家庭などで役割を持ちたいという希望に置き換えることができます)。「がんが治ってまた旅行に行きたい」という希望に対しても、状態が悪化する前に、医師や看護師、介護士などの協力により旅行に行く人はいます。これも、思いの一部をかなえているといえます。

人は誰しも、たとえ病気などで苦しいとしても、「この環境であれば安心する、楽しめる」といった環境が存在します。それを聞き出すことが大切になります。認知症が進行した方で、意思疎通が難しい場合でも、その環境を推測することが大切です。その「環境」を推測するために、本人の生活史や、家族から本人の話をきくことが重要になります。

まとめ

在宅療養の現場では、「その人らしさ=その人が思い描く人生に近づくこと」と定義します。

そして、すべての実現は困難としても、なるべく実現するようにすること、またその人が安心できる環境を見つけること・作ることが、在宅療養の現場では大切となります。

在宅療養の現場では多職種が関わりますが、すべての職種が専門性を発揮して、「その人らしく生きる」ことができるような援助を行うことが、在宅療養の目的となります。

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