おだやか日記

認知症の診療~実例その11~

おだやか診療所です。

本日は認知症の症例その11です。

症例

70代の女性。レビー小体型認知症の診断がついていた。主訴は「眠い」「だるい」などの倦怠感。

血液検査にて軽度の貧血があり、まず鉄剤を処方した。しばらく鉄剤内服で経過を見るも、貧血は改善したが倦怠感は残ったままであった。なお、採血検査にて栄養状態の悪化は見られず、食事はしっかりととっている。

ADLは自立歩行可能であるが、歯車様固縮があり、小刻み歩行などのパーキンソニズムを認めたため、L-DOPAを少量処方し経過を見ることとした。歩行状態などに改善は見られたが、やはり倦怠感はそのまま続いた。家族によると、家での様子からは多少改善していると感じているとのこと。しかし本人は変わりないと言っている。

L-DOPAは歩行状態の改善や筋強剛の改善などが見られたため続行。残る倦怠感に対しシンメトレルを1日2回、1回50㎎朝昼で処方とした。2週間後の外来にて、やはり倦怠感は続き特に改善も悪化もないとのこと。

シンメトレルは中止し、サアミオン処方。しかり、変わりなし。

経過中、何か倦怠感の誘因となっている出来事などはないか本人や家族にいろいろ聞いてみたが、特に誘因は無し。うつ傾向とも考えにくい。血液検査もほとんど正常内であり、癌などを考える症状も特にみられない。健診でのレントゲンもチェックするが異常なし。

内科的な疾患も考えにくい状態であったが、以前脳画像をとったときに小さい脳梗塞を指摘されていたとのことで、プレタールを開始。1日2回、1回50㎎からスタート。これで少し倦怠感の改善が見られたが、やはりまだ続いている。デイサービスに行かない日は、家でぼーっと過ごしているとのこと。

アセスメント

ここまで、内科的な疾患は考えにくい。また、精神的なものも考えにくく、とくに倦怠感の誘因となるようなエピソードもなし。レビー小体型認知症からくるうつ傾向や倦怠感なども考えたが、ほとんどの薬が副作用もないが効果もない状況であった。

最後に考えたことが、アセチルコリン不足の可能性である。HDS-Rを行ってみると、アルツハイマー型認知症に特徴的な失点を示した。そのため、アセチルコリン不足が原因の可能性を考えた。

治療

レビー小体型認知症ではあるが、アセチルコリン不足もあると考え、アリセプトを慎重に0.5㎎から開始。これにより、倦怠感の改善が見られた。本人は「しんどい」と言っているが、家族によると口癖のようになっており、家での様子はアリセプト開始前と比べ、元気になっているとのこと。ようやく、原因がわかり治療がうまくいった。

その後アリセプト1㎎に増量してみたが、0.5㎎の方が調子が良かったとのことで元の0.5㎎に戻し、維持量とした。

まとめ

レビー小体型認知症の倦怠感の原因を探すことに時間がかかった症例である。倦怠感があるとはいえ、食事などをしっかりとっており、栄養状態などに問題がなかったため、時間をかけて原因を探すことができた。しかし、レビー小体型認知症の倦怠感にアセチルコリン不足が影響していたことは盲点であり、もっと早く分かれば、本人の倦怠感ももっと早く取れたはずであり、今後はアセチルコリン不足も常に頭の片隅に入れておこうと思う症例となった。

アリセプト0.5㎎で調子が良くなり、1㎎でかえって調子が悪くなったところから、レビー小体型認知症の薬剤過敏性が存在する症例でもある。アリセプト3㎎でも歩行障害が出た可能性もあり、やはりレビー小体型認知症の方にアリセプトを使用する際には、慎重に開始、増量を行う必要がある。

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