おだやか日記

認知症の診療~実例その9~

おだやか診療所です。

本日は認知症の診療その9です。

症例

80代前半の女性。アルツハイマー型認知症の診断でアリセプト10㎎、メマリー20㎎を処方されていた。

某施設入所後、昼夜を問わず施設内を歩き回る、他の入居者の部屋に入ってしまう、夜間は歩き回っている最中に放尿してしまうという症状がでた。

他の入居者さんからも苦情が来たため、早めに何とかしてほしいとのことで訪問診療導入となった。

アセスメント

施設入居という環境変化により認知症が進行したように見えたと考えられる(リロケーションダメージ)。昼夜を問わず歩き回るということだったが、よく話を聞くと、昼間は比較的落ち着いていることもあるが、夜間はほぼ毎日歩き回っているとのこと。これでは睡眠不足で本人の健康も危険であり、早めの対応が必要と考えた。

昼に関しては症状としては前頭側頭型認知症に近い症状と言える。ただし、夜間に関しては若干せん妄気味でもあり、本体は血管性認知症と推測した。

治療

まずアリセプト、メマリー中止。1週間後、よくなってきたがまだ症状が残っているため、コントミン12.5㎎を1日1.5錠毎食後、就寝前にセロクエル12.5㎎1錠内服追加。この処方で施設内を歩き回ったり、他の入居者の部屋に入ることもなくなり、夜間はしっかり寝ることができるようになった。日中はリビングでお茶を飲みながらおだやかに過ごせるようになり、他の入居者とも打ち解け、笑顔で会話をするようになった。

まとめ

この症例は、環境が変わったことにより、「今、自分だどこにいるのかわからない」ことが不安につながったといえます。その不安から焦りが出て、歩き回ったり、他の入居者の部屋に入ったりすることにつながったのでしょう。また、夜間の放尿は、失禁というよりトイレの場所がわからず、間に合わなかったものと思われます。実際、落ち着いてからは失禁はなくなりました。

「不安」という陰性症状から、「焦燥、徘徊」といった陽性症状が出現することは多くあります。この場合、抗うつ薬や抗不安薬は全く効果がなく、向精神薬の少量投与が効果を発揮します。ただし、介護対応で「不安」をなくすことができれば、向精神薬の使用をせずとも、そのうち改善していきます。今回の症例も、時間をかければおそらく薬なしで改善できたと思いますが、他の入居者に嫌われてしまったら、介護対応も不可能になりますので、早めの薬物療法による介入となりました。

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