おだやか日記

認知症の診療~実例その5~

おだやか診療所です。

ポリファーマシーが盛んに言われている中、本日は数種類の内服薬でようやく落ち着いた症例のお話しです。

症例

80代後半の女性。ADLは車いす全介助。自宅で見ることはできず、グループホーム入居。入居当初より傾眠がちでありながら、介護拒否が強くいわゆる暴力もある状態であった(小柄な80代後半の女性のため、叩かれてもほとんど痛くはないが、つねってくることもあった)。

BPSDに対する処方は特になし。

アセスメント

アルツハイマー型認知症を発症、数年後にレビー小体型認知症を併発、ADLが落ち車いすでの移動となったころに前頭側頭型認知症のような症状が出現するという、ある意味典型的な進行パターン。このパターンでは拒否が強い場合、食事などがとれず、栄養不足からサルコペニア→フレイル→合併症により死亡という可能性があり、介護対応だけでは難しいことが多い。そのため薬物療法による介入が必要となる。

このかたも、食事もほとんど拒否状態、介助も拒否状態で入浴もままならず、そこに意識レベルが落ちるタイプのせん妄が重なっており、介入が必須と考えられた。

また、血液検査や注射などを異常に怖がるため、血液検査ができない、ワクチンの接種ができない、といった問題も存在する。

治療

まず、介護拒否を軽減し、食事をとり、入浴や清拭などを行い衛生面の改善を行う必要があった。そのためウインタミン処方。1日24㎎を1日3回毎食後処方。1包4㎎とし、1回2包。本人の様子を見ながら傾眠があるときはウインタミンを中止もしくは4㎎のみ内服の指示。

傾眠時は拒否はなく清拭はできるようになったが食事はとれない。覚醒時は食事摂取可能となった。傾眠と言うよりはせん妄と考えセレネースを0.5㎎夕食後処方。パーキンソニズムもある方であり、嚥下機能の悪化を防ぐため少量投与とした。これにより傾眠(せん妄状態)が減少し、食事もほとんどとれるようになった。

また、背中などに掻き毟りがありヒルドイドローションやレスタミン軟膏使用も改善無し。前頭側頭型認知症症状による常同行動の一種と考え、ニューレプチル処方。朝3mg、昼2㎎、夕3㎎。ここから状態が改善し、食事は完食、入浴も問題なく行うことができる、血液検査も実施できるようになった。さらに、リビングでみんなが歌を歌っているときに、自分から歌おうとしたり、手拍子をしたりするようになった。このころから他の入居者さんとも打ち解けてきており、軽度の認知症の方が、この方のお世話をするようになった。

まとめ

認知症のBPSDで困っている場合、ほとんどの症例では薬を中止にすることにより改善します(特に抗認知症薬の中止を!)。ただし、今回の症例のように、複数の向精神薬を少量で組み合わせることによりようやく改善する方もいらっしゃいます。ポリファーマシーを意識し、不要な薬を減らすことは大切ですが、必要な薬まで減らしてはいけません。

この方は、もともと歌は好きだったようですので、診察の際にこちらが「もしもしカメよカメさんよ~♪」と歌いながら気をそらして、その間に診察を行っていました。BPSDが激しい方でも、「その方の好きなこと」がわかっていれば、それをうまく利用して対応することも可能です。

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