おだやか日記

認知症の診療と緩和ケア~概念としては同じ~

おだやか診療所です。

本日は、認知症の診療と末期がんなどの緩和ケアの共通点について書いてみたいと思います。

 

物理の世界では、現在「4つの力」があります。重力、電磁気力、強い力、弱い力の4つです。かつては電磁気力も電気力と磁気力に分かれていましたが、マクスウェルにより統一されました。「4つの力」の統一はアインシュタインなども取り組んでいましたが、現在まで達成されていません。しかし、物理ではどの力も根源では同じことがわかっています。

在宅医療でも、根源的なところはどんな疾患であっても同じではないのか、と考えることがあります。まずは、認知症と末期がんの緩和ケアについて考えてみます。

肉体的な痛み

末期がんの緩和ケアでは4つの痛みがあります。

緩和ケアー4つの苦しみ


末期がんの方は残念ながら根治療法を行うことができません。そのため、痛み・しびれ・不安・イレウス・脳浮腫・呼吸苦・腹水・胸水・浮腫などの症状に対し、薬物療法を行います。

認知症も、アルツハイマー型認知症やレビー小体型認知症、前頭側頭型認知症などは根治療法が今のところありません。そのため、中核症状や周辺症状に対し薬物療法を行うことになります(中核症状や周辺症状を肉体的な痛みとしてとらえる)。

両者とも、根治は困難であり、対症療法を行うという点で一致しています。

経済的な痛み

末期がんの方では医療費をどうするか、残される家族の今後の生活(経済面)、相続などの経済的な問題があります。

認知症でも相続の問題、医療費や介護費用の増加、介護離職(収入減)などの経済的な問題があります。

社会福祉士の出番となる問題です。高額医療費還付制度、障害手帳、難病申請、その他いろいろな方法で経済的負担を減らす必要があります。

精神的な痛み

末期がんの精神的な痛みとして、不安・怒り・孤独感・いらだち・恐れ・うつ状態などがあります。不安やうつ状態については薬物療法を行うこともありますが、基本的には非薬物療法で対応する痛みです。本人の考えていることを受け入れ、こちら側が理解したというサインを送り、両者で精神的な痛みを分かち合うことが必要です(NBMでは物語に招かれるといいます)。「招かれる」という言葉の通り、こちらからぐいぐい押していっても失敗することが多いです。患者さんから「この人なら大丈夫」と思って話してくれるような関係を作りましょう。

「不安・怒り・孤独感・いらだち・恐れ・うつ状態」は、認知症の周辺症状の一部です。認知症の場合、薬物療法を行うこともありますが、非薬物療法も併用することが基本です。認知症の非薬物療法には様々な方法がありますが、やはり根源的には同じです。「患者さんの物語に招かれる」ことが重要です。こちらを信用してくれたら、それだけで周辺症状は改善します。「物語に招かれる」ために、非薬物療法を行うといっても過言ではありません。

霊的な痛み

末期がんのターミナルの方は、人生の意味・死生観に対する悩み・何のために生きてきたのか・生まれ変わったら何になるのか・死への恐怖・罪の意識・苦しみの意味(なぜ自分なのか、こんな思いをするような罪を犯したのか?)といった霊的な痛み(スピリチュアルペイン)を感じます。これは、精神的な痛みよりも人間の根源に近い悩みと言えます。患者さんの話をしっかり聞くこと、さまざまな痛みがある中で、どういう環境なら患者さんが安心して過ごせるのかを見つけ出すことが大切です。

認知症の方にも霊的な痛みがあるのではないかと私は考えています。それは、認知症の進行に伴い消えゆくアイデンティティ、消えゆく本来の自分に対する根源的な不安、焦り、怒りなどで表れるのではないでしょうか。つまり、いわゆる認知症の周辺症状は、中核症状からきている部分もあるが、霊的な痛みからきている部分もあるのではないのか、という考えです。介護対応の際、本人を否定するようなことを言うと周辺症状が悪化し、ありのままの本人を受け入れ、肯定的に対応すると周辺症状が改善することはよくあります。認知症が進行した自分を受け入れてくれる、それが本人にとって安心につながっているのでしょう。また、認知症の方が安心して過ごせる環境を見つけることも大切です。

まとめ

以上、末期がんの方の4つの苦しみ「肉体的な痛み」「経済的な痛み」「精神的な痛み」「霊的な痛み」と認知症を比較してみました。認知症の中核症状や周辺症状は「肉体的な痛み」であり「精神的な痛み」であり「霊的な痛み」であるといえます。

この考え方は、在宅療養においては末期がんや認知症以外にも適用できるのではと考えています。治療法は違っても、根源は同じ。この宇宙で生きている以上、物理法則は誰に対しても同じです。人間も、共通部分があってしかるべきでしょう。

まずは共通部分に対する治療などの対応をマスターし、その後一人一人に合わせた治療や対応を勉強していくことが大切です。

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