おだやか日記

認知症サポート医の研修

 

おだやか診療所です。

本日は、先日行われた認知症サポート医の研修についてお話ししたいと思います。

認知症サポート医の役割

認知症サポート医の役割については、画像に書かれているような内容となります。新オレンジプランでは、「認知症の人の意思が尊重され、できる限り住み慣れた地域の良い環境で自分らしく暮らし続けることができる社会の実現を目指す」ことが目標とされています。この目標を実現するべく、地域への認知症の啓もう活動、多職種の連携などが主な役割となります。認知症の方が住み慣れた街で暮らし続けるためには、地域住民の認知症に対する知識と理解が必要です。「認知所カフェ」などで認知症の方と地域の方が触れ合い、理解を進めていくことが必要になるでしょう。

地域の住民が認知症を知ることにより、早期発見が可能となります。家族がいる方であれば、家族が気づくことが多いのですが、独居の方ではなかなか気づかれません。もともとはちゃんとしていた人が、ゴミを出す曜日を間違えたり、買い物の際に数百円でも1万円札を出すようになったり(計算ができなくなってきていることを示唆する)といったことから認知症を疑うことができます。認知症の早期発見による利点は上記の図のような内容となります。ただし、「薬物療法による進行抑制が可能」は誤りであり、正しくは「認知症の症状の進行の抑制が可能」となります。認知症の周辺症状(BPSD)の原因の一つに、特に家族の初期対応の間違いがありますので、認知症の知識は非常に大切となります。

認知症の診断・治療の知識

認知症の診断

 

上記の図はアルツハイマー型認知症の診断基準となります。なお、major neurocognitive disorder とは「複雑性注意、実行機能、学習および記憶、言語、知覚運動、社会的認知)が以前の機能レベルから低下している」ことを指します。

 

レビー小体型認知症の診断基準となります。以前の記事でも指摘した通り、「薬剤過敏性」の記述がなくなっています。

レビー小体型認知症~薬剤過敏性を忘れずに~

 

 

 

前頭側頭葉変性症の診断基準です。65歳以下の発症が多いと書かれていますが、65歳以上でも前頭側頭葉変性症の症状が出現することはたくさんあります。頻度(アルツハイマー型認知症の10分の1以下)についても、実際にはもう少し多いのでは?と思います。

血管性認知症の診断基準です。症状からおおよそ脳のどこの部分が障害されているか推測できますので、脳画像にてその部分に出血や梗塞がある場合は血管性認知症を考えます。

ここまで、「アルツハイマー型認知症」「レビー小体型認知症」「前頭側頭葉変性症」「血管性認知症」の診断基準についてみてきましたが、正直なところ、実際の臨床現場ではほとんど役に立ちません。これらの診断基準を完全に満たそうとすると、認知症専門医のいる病院への受診が必須となります。しかし、どこの病院の認知症外来も非常に忙しいので、典型的な認知症は開業医の外来や訪問診療で診断をつけたいところです。その上で、脳画像をとることが望ましいでしょう(脳腫瘍、慢性硬膜下血腫、正常圧水頭症などの有無を調べるため)。

認知症の治療

抗認知症薬については省略します。どのみち、認知症サポート医研修の内容で抗認知症薬を使用しても改善は期待できません。

ガイドラインでは、認知症のBPSDに対しまずは非薬物療法を実施し、それでもうまくいかないなら薬物療法を考えるとされています。しかし、これも人によりけりであり、BPSDが激しい人に対してはまず薬物療法を行い、介護対応できるようにする必要があると思います。そして、介護対応を行っていくうちに、BPSDは少しずつ改善します。それを見ながら、少しずつ薬を抜いていくと、非常に良くなることが多いです。

不適切なケアに書いてある「認知症の人の不安を増すようなケアを避ける」は、非常に重要です。在宅療養では、認知症に限らず、患者さんや家族に対し不安を与えてしまうと、まず失敗します。逆に、安心してもらうように配慮すると、ほとんどの場合うまくいきます。

クエチアピンはセロクエルのことです。リスペリドンはリスパダールのことです。バルプロ酸はデパケンなどです。パロキセチンはパキシルのことです。さて、クエチアピンは割と良い薬なのですが、糖尿病の方には禁忌です(たまに糖尿病の方に処方されていることがあります!)。理由は、高血糖を起こしかねないからです。

リスペリドンは、私はほとんど使用しません。理由としては、固縮(体が固まってしまい、動けなくなること)の副作用が案外多いからです。また、クエチアピンほどではありませんが、リスペリドンも糖尿病の方は注意が必要です。

バルプロ酸についても、私はあまり使用しません。認知症と考えられていた方の中に、たまにてんかんが原因であったということがあります。その場合はバルプロ酸やその他の抗てんかん薬を使用します。

抑肝散についてはアルツハイマー型認知症や前頭側頭葉変性症の周辺症状にはあまり効果はありません。レビー小体型認知症の「幻視」に対しては有効です。ただし、血圧の上昇や低カリウム血症に注意する必要があります。

FTD(前頭側頭葉型認知症)に対するパロキセチンはほとんど効果はありません。セロトニン不足が原因と思われるうつ状態の方に使用することはありますが、前頭側頭葉型認知症のBPSDに対し使用することはまずありません。

制度・連携の知識

現在、介護保険で使用できる制度については複雑になってきています。通所介護、訪問介護、地域密着型通所介護、認知症対応型通所介護、福祉用具、ショートステイ、認知症対応型共同生活介護(グループホーム)、介護老人保健施設、介護老人福祉施設(特養)、定期巡回・随時対応型訪問介護看護、小規模多機能、看護小規模多機能、介護医療院・・・・・・たくさんありすぎて混乱してしまいますね。

これら多くのサービスから、一人一人に合わせたサービスを選択することが大切となります。その際には、「認知症の人の意思が尊重され、できる限り住み慣れた地域の良い環境で自分らしく暮らし続けることができる社会の実現を目指す」ということを忘れないようにしたいものです。

住み慣れた地域といっても、施設に入所した場合は地域と断絶することがほとんどですので、施設入所は慎重に考えていきたいものです。

まとめ

二日間にわたり認知症サポート医の研修を受けてきましたが、この講習のみで認知症の診断や治療、地域への啓もう活動、多職種連携の構築などは難しいでしょう。特に病院や医師会から委託を受けて受講した医師には、難しかったと思います。内容が豊富な割に時間が短かったことも原因かとは思いますが。

最後に、数人一組になりグループワークを行ったのですが、特に認知症の診断・治療に関しては「あの内容で良いのだろうか」という意見が出ていました。私自身も同じ感想を持ちました。今回の研修の内容をもっと簡単に、わかりやすく、それでいて診断や治療が行えるようになる、そういった啓もう活動を行う必要があると思いました。

 

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