おだやか日記

高齢者の高血圧~下げすぎにも注意~

おだやか診療所です。

本日は高齢者(75歳以上)の高血圧の治療についてお話ししたいと思います。

高齢者の血圧の目標値

年齢を重ねると、通常血管が石灰化し硬くなるため、血圧は上昇します。そのため高齢者が多い在宅医療の場合、血圧が高い患者さんが多くいます。その際に血圧がいくつなら治療を開始したほうが良いのか、どのくらいまで下げたほうが良いのか、これについてはいろいろな議論があります。

日本老年医学会のガイドラインによると、高血圧に治療開始及び目標値は以下のようになっています。

年齢 65歳~74歳 75歳以上
治療開始の基準 140/90 mmHg以上 150/90 mmHg以上
目標血圧値 140/90 mmHg以下 150/90 mmHg以下

個人的には160mmHgくらいは許容範囲だと思うのですが、老年医学会のガイドラインでは上記の表のようになっています。なお、高血圧が長い間続く人の中に、Binswanger型の血管性認知症を発症する人がいます。

看護rooより引用

高血圧の治療

高血圧の薬はたくさんありますが、近年主に使用されるものは「カルシウム拮抗薬(Ca拮抗薬)」と「アンジオテンシン転換酵素阻害薬(ACE阻害薬)(もしくはアンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB))」の2種類です(ACE阻害薬とARBは作用機序は違うのですが、働きは似たようなものなので同じ薬として扱います)」

ここでも、患者さん一人一人に合わせた治療が必要となります。たとえば、くも膜下出血や脳出血の既往がある方は、しっかりと血圧を下げる必要がありますので、やや厳しめにコントロールを行います(130/80mmHg以下)。逆に、寝たきり状態の人や認知症のある方は、おだやかに血圧を下げていきます(160/90mmHgくらいでいいと思います)。さらに、誤嚥のリスクが高い人にはACE阻害薬を使用する、軽度の腎機能低下がある人はACE阻害薬かARBを使用する(数年前まではCa拮抗薬を使用していましたが)、高度の腎機能障害がある人にはCa拮抗薬を使用する、といった具合です。

さて、高血圧を治療するときに注意する点として、「少しずつ血圧を下げること」があります。これは、血圧を高くしてようやく腎臓や脳といった臓器に血液を送り込んでいる人の血圧を一気に下げると、各臓器の血液が足らなくなるからです。

また、認知症の人の血圧を下げすぎると、認知症が悪化することがありますので、これも注意が必要です。

低血圧は?

高齢者は高血圧の方が多いのが事実ですが、ときおり低血圧の方もいらっしゃいます。普段から血圧が98/46mmHg程度で、上の血圧(収縮期血圧)が100mmHgを切っている人もいます。こういった方は、パーキンソニズムを伴う病気(パーキンソン病、レビー小体型認知症など)に多いようです。

血圧が低くても、それがいつものことであり、本人の様子も変わりがない場合は、特に気にする必要はないと思います。ただし、座った状態から立った時に立ちくらみやめまいがすることがある(起立性低血圧)ので、十分注意しましょう。立ち上がった後、30秒くらいそこで立ち止まって、それから歩行するとよいと思います。もちろん、起立性低血圧がひどい場合には、血圧を上昇させる薬が効果を発揮することがあります。

まとめ

高血圧であっても低血圧であっても、絶対値(例えば150/90mmHgなら治療するといった具合)よりも、患者さん本人の相対値(いつもより血圧が高い、低いなど)を考え、一人一人の病状や症状に合わせた治療が必要です。老年医学会のガイドラインも、あくまで目安の一つとして考えることが大切です。得認知症のある方は、血圧を下げすぎると症状が悪化するので十分注意しましょう。

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