おだやか日記

認知症の診療と介護~根っこは同じ~

おだやか診療所です。

本日は認知症の診療および介護において最初に行うべき認知症のタイプ分けについてお話ししたいと思います。

認知症のタイプ分けが必要な理由

認知症の原因となる疾患はおよそ70種類くらいあるといわれています。その大半を占めるのは、「アルツハイマー型認知症」「レビー小体型認知症」「前頭側頭葉変性症」「血管性認知症」の4つとなります。

東員病院ホームページより

各認知症の割合は上記の図のようになっています。私の印象としては、もう少しレビー小体型認知症の割合は多いと思います。

ここからが問題なのですが、画像診断などでは「アルツハイマー型認知症」と診断されても、症状としては前頭側頭葉変性症に近い、という人が結構な割合でいます。また、当初「アルツハイマー型認知症」と考えていたが実は「レビー小体型認知症」であった、というパターンも結構あります。そして、認知症の治療も介護も、画像などによる診断よりも、症状に合わせて行うことが大切となります。今後、例えばアルツハイマー型認知症の根治薬(治す薬)が出てくれば話は変わりますが、現在は残念ながら認知症の根治薬はありません。

重要なことは、画像などの診断にこだわることよりも、症状を見極めることです。それが、診療や介護の第一歩となります。

認知症のタイプを見分けるには

認知症のタイプを見分けるコツは、各認知症の典型的な症状を把握しておくことです。

例えば、アルツハイマー型認知症では「物忘れ(短期記憶力の低下)」「取り繕い」などの症状が典型的です。レビー小体型認知症では「パーキンソニズム(パーキンソン病のような症状)」「幻覚」「大きな声での寝言」などが典型的です。前頭側頭葉変性症では、前頭様症状として「暴言」「瞬間的な易怒性」が、側頭葉症状として「意味性認知症」などが典型的です。血管性認知症は、脳のどこがダメージを受けたかによって症状が変わります。

認知症のタイプ分けができたら

認知症のタイプ分けができたら、それを医療や介護に役立てます。

まず医療では、認知症のタイプ分けから、原因の疾患を予測します。「レビー小体型認知症」と「前頭側頭葉変性症」の症状が両方出ている人もおり、その場合進行性格上性麻痺、多系統萎縮症、大脳基底核変性症などの可能性を考えます。また、治せる認知症をしっかり診断するために、脳画像や血液検査を行います。治せる認知症を除外したのちに、認知症のタイプ分けで診断した病状(あくまでも症状からの診断であり、画像診断と合わない場合は、症状からの診断を優先します)を考え、治療を行います。また、認知症の治療では、病状だけではなく、本人の生活環境やどのような人生を過ごしてきたか、といったことも大切です。これをナラティブベイスドメディシン(Narrative based Medicine:NBM 物語に基づく医療)と言います。

介護では、認知症のタイプを分けたら、そのまま適用します。たとえば、アルツハイマー型認知症では物忘れがありますから、もし食事を食べた後すぐに「食事まだ?」と聞かれたら、「今作っていますからもう少しお待ちくださいね」と声掛けをします。待っている間に忘れることを利用します。レビー小体型認知症では歩行時の転倒や食事の際の誤嚥などに十分注意します。また、幻覚が見えているときは否定せずに対応します。たとえば、小さな虫が幻覚として見えているときに、虫を払うように手を動かして、「もういなくなりましたよ」と声掛けをすると、幻覚が消えることがあります。また、レビー小体型認知症の患者さんは認知機能はしっかりしていることが多く、幻覚を幻覚であるとわかっていることもあります。その時は十分傾聴することにより落ち着きを取り戻すでしょう。介護でも、医療の場合と同様に、その人自身に合わせた介護が必要となります。その際に大切な情報として、その人がどのような人生を歩んできたか、というものがあります。たとえば、元大学教授の方の場合、「お茶入れましたよ」という声掛けよりも、「先生、お茶を一杯どうですか」といった声掛けのほうがお茶を飲んでくれることがあります。

まとめ

医療でも介護でも、認知症への対応はまず症状から認知症のタイプを分け、それに合わせた医療、介護を行うことが第一歩です。そして、その人自身の環境や人生などを考えた個別の対応が、第2ステップとなります。認知症に対する医療、介護の考え方の根本は同じであるといえます。病気(症状)をいかに理解するか、患者(利用者)個人をいかに理解するか、この2つが大切となります。

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