おだやか日記

緩和ケアー4つの苦しみ

おだやか診療所です。

本日は緩和ケアについて書いてみたいと思います。

 

緩和ケアといえば末期がんを思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。もちろん、末期がんの方への緩和ケアは非常に大切です。しかし、非末期がんの方への緩和ケアや、癌の治療を行っている方への緩和ケアも大切です。緩和ケアは、がんの末期の方にのみ行うのではなく、必要な時に、必要な方へ行うものなのです。

(画像は亀田総合病院ホームページより)

末期がんの方には、4つの苦しみがあるといわれています(非末期がんのターミナルの方も同じ苦しみがあると思います)。4つの痛みとは図にあるように、「身体的苦痛」「社会的苦痛」「精神的苦痛」「霊的な苦痛(スピリチュアルペイン)」になります。

 

身体的苦痛は、想像しやすいと思います。身体的苦痛に対しては、主にNSAIDs、弱オピオイド、強オピオイド(いわゆる麻薬性剤)を中心に、様々な痛みに合わせて薬を使用します。患者さんには、痛みを我慢しないように伝えます。私自身の経験からは、不安を持って過ごしている人より、安心して過ごしている人のほうが、身体的苦痛は少ないように感じます。つまり、「安心」がキーワードになります。

社会的な苦痛は、金銭面や仕事、家庭の問題などが該当します。こういった問題は、今後ソーシャルワーカーがカバーする分野になるかもしれません。しかし現在は在宅の現場にいるソーシャルワーカーは非常に少ないので、チーム全員で考えていく必要があります。

精神的な苦痛は、抗うつ剤などを使用することもありますが(鈍い痛みによく抗うつ剤を使用します)、基本的には本人が少しでも安心できる環境を作っていくことが大切となります。人によってさまざまでしょうが、例えば「好きな音楽を聞いているときは落ち着く」「人と会話しているときは不安を忘れる」「好きな食べ物を食べているときはよい気分になる」など、本人にとって安心できる環境を探します。

霊的な痛み(スピリチュアルペイン)は、日本人には少々理解しづらい考え方だと思います。精神的な痛みとあえて分けているというところがポイントかなと感じています。おそらく、極めてキリスト教的な考え方なのでしょう。以前敬虔なキリスト教徒の方から、「死んだら自分はどうなるのか、何に生まれ変わるのか、悩んだことはありませんか」と質問されたことがあります。「生まれ変わったら裕福な家で可愛がられて飼われる猫になりたい」と思っていますが、それで悩んだことはありません。霊的な痛みは、「なぜ自分ががんになるのか。癌になるような悪いことをしたとでもいうのか」「なぜ自分が死ななければならないのか」「自分は何のために生きてきたのか」といったことになります。精神的な痛みよりもさらに根源的な痛みと言えます。人間に限らず生きとし生けるものは、生きること、生き残ること自体が目的です(生物学的には)。人間は前頭様が発達し、様々な価値観を持つようになったため、却って最も基本的なことを見逃してしまうこともあります。それを防ぐために、霊的な痛みを精神的な痛みと一緒にしなかったのでしょう。

 

この4つの痛みは、それぞれ独立しているわけではなく、複雑に絡み合っています。たとえば、経済的な不安からそれがストレスとなり、肉体的な痛みを感じるようになったり、肉体的な痛みに対しがんの進行を感じ、それが精神的な痛みにつながったりします。これらの痛みをできるだけ取り除くには、患者さん本人や家族も含め、在宅療養にかかわるチーム全員が、患者さんや家族の不安をできるだけ取り除くようにしていくことが必要です。

 

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